
マウスピース型矯正装置(インビザライン)
本日は、透明な可撤式合成樹脂素材によって歯の移動を行う、マウスピース型矯正装置について見ていきましょう。
メリット・デメリット
マウスピース型矯正装置のメリットは、なにより透明の合成樹脂素材のため【目立ちにくい】ことです。アタッチメントと呼ばれる、補助的な突起物やゴムをかけるボタンなどは歯に付ける必要がありますが、それも目立たない素材のものを使用できます。また【取り外し可能】なため、口腔清掃が容易で虫歯のリスクを軽減できます。最後に【歯の動きの過程をシミュレーションで視覚的に確認できる】ことも利点の一つです。特に患者さんにどのように歯が動くのか確認していただけることは、治療の理解を得やすくなるというメリットがあると思います。しかしシミュレーションはあくまでコンピューター上での再現であり、生体を相にする実際の治療とは誤差があります。
デメリットは【装着時間に左右される】ことです。規定の装着時間より使用時間が少ない場合は計画通りに歯が動きません。また歯冠部が短い、歯が小さいなど【歯冠形態によっては、マウスピースの把持力が弱まり歯が動かしにくい】こともデメリットの一つです。何より一番のデメリットは【苦手な症例がある】ことです。捻転している歯の移動や、歯根の移動はまだまだマウスピース型矯正装置では難しい動きになります。
基本構成
マウスピース矯正の場合、歯牙にはアライナーの把持力強化と効率的な歯の移動の補助のためのアタッチメントと呼ばれる突起物や顎間ゴムをかけるためのフックやボタンがつきます。マウスピース側にもゴムをかける切れ込み(プレシジョンフック)や、歯の移動のための凹凸等が入ります。
作用機序・留意点
まずは光学印象を行い、歯列の3位次元情報を得た後、コンピューター上で歯の移動のシミュレーションを行います。シュミレーションの修正を何度か行い、最終的な歯の位置が決定したら、移動の行程を細かく分割し、それそれのステージごとの三次元模型が出来上がり、その模型に樹脂を圧接して切り取るとマウスピースが出来上がります(マウスピースの作成は外注)。
患者さんには出来上がったマウスピースを一日22時間使用していただき(飲食時以外)、1週間ごとに(歯の移動様式により前後)交換していっていただきます。
留意点として、シミュレーションはあくまでコンピューター状での予測ですので、実際の生体とは違い、骨の密度や硬さ、矯正力に対する、それぞれの生体の反応、歯の移動に対する半作用の程度、口腔周囲筋(舌や口唇)の機能圧といった情報は含んでいません。よってシュミレーション通りに全ての移動が行われることはありません。また土台の歯から飛び出すような歯の移動や、実際には不可能な移動が提示させくる場合もあります。
また現在のマウスピースではトルクの発生(歯根を移動)のために必要な大きなモーメントの発生はできません。左の図のような歯冠の傾斜移動のみで噛み合わせの改善する噛み合わせの浅い症例は得意ですが、右図のように噛み合わせが深く、歯根の遠心移動が必要なケースには向いていません。
同じ理由で犬歯(糸切り歯)が近心に倒れている症例は比較的得意ですが、遠心に倒れている症例には向いていません。
抜歯が必要な症例で犬歯が左の図のように近心に傾斜(前方に倒れている)症例は得意ですが、右図のように遠心に倒れている症例は不得意です。
上記留意点はありますが、審美面や清掃面で患者さんのメリットのある装置です。診断を間違わなければ快適に矯正治療を行えます。しかし診断を間違える(無理やりマウスピース矯正に持っていく等)と患者さんに被害が及ぶ可能性があります。
当院ではマススピース矯正治療の適応であるかを慎重に判断し、可能な限り患者さんの要望に沿った治療を提案いたしますが、どうしても難しい患者様には同じくインビジブルアプライアンス(目立たない矯正装置)である舌側矯正治療を勧めさせていただきます。患者さんの一生涯にわたる健康で審美的な歯並びと噛み合わせのために責任を持って治療にあたらせていただきます。興味のある方はいつでもご相談ください。
監修
おとなとこどもの歯並び
中山矯正歯科・小児歯科 西大寺 院長
中山 雄司(なかやま ゆうじ)
経歴
- 2012年3月
大阪歯科大学卒業 - 2018年3月
大阪歯科大学大学院歯学研究科博士課程終了 - 2019年4月
大阪歯科大学 歯科矯正学講座 助教 - 2021月4月
大阪歯科大学 附属病院矯正科 診療主任 - 2021年12月
日本矯正歯科学会認定医取得 - 2025年1月
大阪歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学)講師(非常勤)
資格・所属学会
- 歯学博士
- 日本矯正歯科学会認定医
- 日本矯正歯科学会
- 近畿東海矯正歯科学会
- 日本舌側矯正歯科学会
- 日本顎変形症学会
- 近畿矯正歯科研究会
- 日本顎関節学会
- 日本歯科医学教育学会
