上顎前方牽引装置
今回は顎外固定装置である上顎前方牽引装置について勉強していきます。
上顎前方牽引装置とは、上顎の劣成長による受け口の患者さん(成長期の)に使用する顎外固定装置です。
基本構成
1.固定源:フェイスマスク
2.口腔内装置
・リンガルアーチ(ナンスのホールディングアーチ)
・急速拡大装置
3.牽引用エラスティック
作用機序・適応症
上顎前方牽引装置の適応症は、下顎前突症(受け口)の中でも右側のように上顎が成長しきれずに後退した症例に適応されます。左のように下顎骨の過剰な成長による下顎前突症には使用できません。上顎骨を前下方に牽引することで上顎の前方成長を促進します。
適応年齢は上顎骨の成長の旺盛な時期6歳〜10歳頃です。
使用方法
毎晩就寝時に装着してもらい、ゴムの力(400g前後の力)にて上顎骨を前方に牽引します。
私の経験上、遺伝性の受け口の場合は下顎骨の過剰な成長によるものが多く、将来的に外科的矯正治療(骨切り併用の治療)が必要な場合が大きです。しかし扁桃腺の肥大や、それに伴う舌癖、前歯部の早期接触による後天的な受け口は、上顎の劣成長によるものが多く、上顎前方牽引装置の使用や、口腔周囲筋機能の改善等により、改善できる場合があります。そのためには適切な時期に適切な装置を使用することが重要になるため、早めに専門のクリリニックで診てもらってください。
監修
おとなとこどもの歯並び
中山矯正歯科・小児歯科 西大寺 院長
中山 雄司(なかやま ゆうじ)
経歴
- 2012年3月
大阪歯科大学卒業 - 2018年3月
大阪歯科大学大学院歯学研究科博士課程終了 - 2019年4月
大阪歯科大学 歯科矯正学講座 助教 - 2021月4月
大阪歯科大学 附属病院矯正科 診療主任 - 2021年12月
日本矯正歯科学会認定医取得
資格・所属学会
- 歯学博士
- 日本矯正歯科学会認定医
- 日本矯正歯科学会
- 近畿東海矯正歯科学会
- 日本舌側矯正歯科学会
- 日本顎変形症学会
- 近畿矯正歯科研究会
- 日本顎関節学会
- 日本歯科医学教育学会