不正咬合の原因①先天的原因
なぜ不正咬合になったのか、その原因を考えることは矯正治療にとってとても重要です。特に成長期の患者さんの場合、不正咬合の原因を取り除き、顎の成長や、歯の萌出を正しい軌道に乗せることにより、不正咬合の発生や進行を防ぐことができます。本日は、原因の分かっている不正咬合について勉強していきましょう。
先天的原因と後天的原因
不正咬合の原因は図のように先天的原因と後天的原因とに別れます
先天的原因:出生前から存在する原因
後天的原因:出生後に現れてくる原因
その中でも、本日は先天的原因、お母さんのお腹の中にいる時にはもう存在する原因(遺伝的な原因)についてみていきます
先天異常疾患
不正咬合を発現する先天異常の代表的なものをあげました
不正咬合の代表的なものとして、3.Down症候群Cruzon症候群6.Apert症候群7.鎖骨頭蓋骨異骨症は反対咬合(受け口)を呈します
2.Goldenhar症候群8.Treacher Colins症候11.Pierre-Robin症候群は下顎劣成長の上顎前突症(出っ歯)を呈します
これらは全て、矯正治療に健康保険が適応されますので、矯正専門クリニックや大学病院の受診をおすすめします
歯数の異常
過剰歯:余分な歯
上顎の正中部に多く発生し、歯のガタガタや正中離開の原因になります
欠如歯:生まれつき足りない歯がある
上顎左右側4番目5番目の歯
下顎左側3番目5番目の歯の先天欠如
先天欠如歯の後発部位は側切歯(2番目の歯)第二小臼歯(5番目の歯)です
先天欠如歯があると、歯列に空隙ができたり、臨在歯の傾斜、対合する歯の過剰な萌出を招きます
歯の形態異常
巨大歯
上顎の前歯に多く認められます
叢生(ガタガタ)になったり、前歯が唇側に傾斜しやすくなります
矮小歯
上顎の側切歯(前から2番目の歯)に多くみられます
歯列に空隙が出ることがあります
癒合歯・癒着歯
癒合歯:内部の神経まで繋がっている歯
癒着歯:神経は各々分離しているが歯冠が繋がっている歯
後発部位:下顎側切歯(前から2番目)と犬歯(前から3番目)
口腔軟組織の異常
巨舌症
舌圧が高くなり、歯の唇側(前方)傾斜や開咬、空隙歯列などを招きます
小帯の異常
代表的なものに上唇小帯(図の緑矢印)の付着位置異常による正中離開があります
また舌の小帯の強直による舌の動きの制限(舌を挙上しようとするとハート形の形態を呈する)が原因の異常嚥下癖、発音障害などがあります
先天的原因は出生する前から存在している不正咬合の原因のため、事前に防ぐことはできません。その人のもつ口腔の個性と考え、過剰歯や小帯の異常は外科的処置により改善し、そのほかの症状は、適切な診断に最も患者さんに有益(しっかり噛めて、しっかり機能することができ安定する)な治療になるように最善を尽くすしかないと思います
監修
おとなとこどもの歯並び
中山矯正歯科・小児歯科 西大寺 院長
中山 雄司(なかやま ゆうじ)
経歴
- 2012年3月
大阪歯科大学卒業 - 2018年3月
大阪歯科大学大学院歯学研究科博士課程終了 - 2019年4月
大阪歯科大学 歯科矯正学講座 助教 - 2021月4月
大阪歯科大学 附属病院矯正科 診療主任 - 2021年12月
日本矯正歯科学会認定医取得
資格・所属学会
- 歯学博士
- 日本矯正歯科学会認定医
- 日本矯正歯科学会
- 近畿東海矯正歯科学会
- 日本舌側矯正歯科学会
- 日本顎変形症学会
- 近畿矯正歯科研究会
- 日本顎関節学会
- 日本歯科医学教育学会